心と経営の力学 【No.10】 5S導入で躓かないための5つのポイント③「例外を許容する仕組みづくり」
前回、5S導入する際の2つ目のポイントとして「基準を作る」重要性を説明しました。
使用頻度に応じて 「モノを区分する基準」については、原則として"部門毎"、"製品毎"・・・といった例外を設けず、7割~8割をカバーできそうな全社共有の基準を1つ設定します。これにより、全社員が迷うことなく判断できるようになります。
一方で特殊事情がいろいろあって、なかなか一つに絞り切れないという場合があるのも事実です。しかし、ここで安易にケースバイケースによってルールを複雑化しはじめると、そのうち「何かを見ないと分からない」「誰かに相談しないと判断できない」・・・といった状況が起きやすくなります。そして、徐々に共通基準が曖昧になり、個々の社員によって判断基準が異なる元の状態に戻ってしまいます。実際、これによって多くの会社で5Sが続かなくなっています。この対策として有効なのが、予め例外を許容する仕組みを作っておくことです。
具体例を一つ紹介します。例外となる対象物として多いのは、「共通基準を適用できなかった2割~3割のモノ」と、「不用品として直ぐに捨てる判断ができないモノ」です。これらのモノを置く際に、「例外シール」と、「一次保管シール」を貼付します。
1)例外シール
まず、「例外シール」ですが、「不急品」の基準に当てはまっているけど、「必要品」として扱いたいモノが主な対象となります。たとえば、「使用頻度は半年に1度使うかどうかだけど、○○の理由で身近な場所に置きたい」といった類のモノです。必要品エリアに、これらのモノを置く際は、"例外"の表記と"責任者の名前"を記載した「例外シール」を貼付します。また、責任者は例外とした理由を明確にしておき、質問された際に答えられるようにしておきます。
2)一時保管シール
次に、「一時保管シール」ですが、「不用品」の基準に当てはまっているけど、「不用品」として処分する判断が直ぐにできないモノが主な対象となります。たとえば、「もう何年も注文がない製品を作る時に使う専用工具だけど、また注文があるかもしれない」といった類のモノです。不急品エリアに、これらのをモノ置く際は、"一次保管"の表記と"責任者の名前"、"保管期限"を記載した「一次保管シール」を貼付します。また、責任者は一次保管とした理由を明確にしておき、質問された際に答えられるようにしておきます。
そして、これらの表記シールの貼ってある対象物を、たとえば3ヶ月毎の頻度で定期的にチェックします。「例外シール」が貼られているモノは、本当に例外に値するか?また、例外シールが貼ってある対象物があまりにも多い場合には、共通基準について再度指導したり、場合によっては必要品の使用頻度をあらためて検討し直したり、する必要があります。
他方、「一時保管シール」の貼られた対象物は、定期チェックの中で保管期限が過ぎていないかを確認します。保管期限を超過している場合は、「不用品として処分する」か「保管期限を再延長」するかを決めます。なお、保管期限を再延長する際は、シールに記載した初回期限を消さずに、横線を引いて分かるようにしておき、空いているスペースにあらたな保管期限を記載します。またこの際、延長する期限は最長でも6ヶ月とし、再延長は2回までとします。ここで重要なことは、2回目の延長期限を過ぎている場合は、再延長を認めず、潔く不用品扱いにします。
如何でしょうか?このように、予め例外を許容する仕組みを設けておくことで、不必要に判断基準を複雑化することなく、1つにすることができます。
もし、全社共有の判断基準の中に新たなルールを盛り込みたくなったら、ぜひ試してみてください。
次回は、5S導入の初期段階で躓かずに確実に変化を起こすための秘訣をご紹介します。