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心と経営の力学 【No.18】 なぜスポーツ選手の主体性や協調性はレベルが高いのか? 生産性を高めるヒントがここに・・・

昨年は、ラグビーのワールドカップが日本で開催され大きな盛り上がりをみせました。また、いよいよ今年の夏には東京オリンピックが開催されます。今から楽しみにしている方も多いのではないでしょうか?
 スポーツ庁が、国内のスポーツ関連の市場規模を2025年までに15兆円(15年比3倍)にする目標を掲げている事からも、スポーツに関心を寄せる方が如何に多いかということが伺えます。

スポーツの魅力を高めている理由の一つに、選手の主体性や協調性のレベルの高さがあると思います。試合中はもちろん、それに向けた練習の中でも選手は徹底的に自分を追い込みます。また、刻々と状況が変わる試合の中で、チームメンバーの動きや状況を考えながら最良の選択をし続けます。こうした姿を見ていると、心が打たれたり、感化されることが多々あります。もちろん、皆さんがスポーツをやる側に立てば、自然と同様の行動をとる場面も多いでしょう。

社内業務においても、個々の社員がこれだけ主体的に考えたり、行動したり、協調性を持ったり、してくれたら素晴らしい会社になると思いませんか?

なぜ、スポーツでは、これだけ高いレベルで主体性や協調性が発揮され、会社の中では実現が難しいのでしょうか?その違いは、どこにあるのでしょうか?

さまざまな要因はあるでしょうが、もっとも大きな違いは「ルールがあるか / ないか」だと私は考えています。

なんだぁそんな事か、と思われたかもしれませんが、皆さんの好きなスポーツにルールがないことを想定してみてください。考えられませんよね。

"ルール"とは、表現を変えれば、人の考えや行動をある範囲や方向に誘導するための"決まりごと"であり"基準"です。
このため、もしルールがなければ、選手達は自分がどう考え、どう行動すればよいのか、たちまち迷うことになります。「どんな能力を高めればチームに貢献できるのか?」、「一体どんな練習(学習)をすればよいのか?」、「他のメンバーとどうやって協調すればよいのか?」・・・。考える枠組みや、行動を方向付ける"決まり"がないのですから、当然と言えば当然です。

ここで、皆さんの会社を振り返ってみてください。複数の社員が働いているにも関わらず「ルールがない」という、とんでもない状況が起きていないでしょうか?また、それでいて「うちの社員はちっとも主体的に行動しない」、「考えない」、「協調性がない」・・・なんて嘆いていないでしょうか?

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 先週訪問したクライアントのL社では、最終検査員が4名いますが、外観検査のルール(良品 / 不良品の判断基準)がありませんでした。このため、少しでも疑わしい製品が流れてくると、検査員の間で意見が分かれます。自分達で意見がまとまらない場合、その上の主任に確認するのですが、主任の間でも意見が分かれる、といったことが起きていました。
 寸法の合/否を判定すればよい数値基準と異なり、たしかに主観的な要素が含まれる外観基準は定めるのが難しい側面があります。しかし、「1つの面に対して〇mm角以下の傷が〇個までは合格」、「〇〇の距離から見た時に、米粒大のムラであれば合格」といった何らかの基準を定める、限度見本や写真を用意しておく、といった対応は可能です。このようなルール(判定基準)があれば、万能でなくても判断に迷う場面は相当少なくなります。

また、5S活動において、要るモノと要らないモノを分ける「整理」の段階で、ルールがないためにA社員とB社員で要る/要らないの判断が分かれるなんてことが頻繁におこります。何とか判断しようとするだけまだよくて、分からないので結局そのまま放置されるケースはさらに多く見受けられます。不要品を捨てる活動を強力に推進するためには、やはりルールが必要です。例えば、以前のコラムでご紹介したように「所定期間中の使用頻度」や「所有数」等のルール(基準)を定める方法があります。こうしたルールがあれば、全社員が同じ基準で判断できるようになります。
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 このように行動や判断の生産性を高めるのに役立つルールですが、一方で「ルールを作ると社内がギスギスするような感じがして嫌だ」、「社員がルール尊重になって何も考えなくなるのが心配」、「複数のケースがあってルールなんて定めようがない」・・・等、何らかの理由を挙げてルールをなかなか定めたがらない会社もあります。

たしかに、社員をルールでガチガチに縛り過ぎるのは逆効果になる場合もあります。また、ルールを設定しにくい業務もあるでしょう。
 しかし、全ての業務を十把一絡げにして何のルールも定めないということであれば、ルールのないスポーツのように、社員は考えや行動に迷うことが多くなります。これでは、生産性向上なんて到底望めません。
 また、逆にルールがなく個々の判断に委ねる部分が多いと、「アイツは堅物だ」、「アイツはいい加減だ」・・・等、個人の性格に感情の矛先が向かい、社内に不協和を生む原因にもなります。
 こうした観点からも、一定のルールを設ける必要があります。そこで、当社では業務の性質を考慮しながら、次のようにすることをお勧めしています。

1)頻繁に行う定型業務:ルールや標準プロセスをきるだけ正確に定める。また、定期的によりよい方法がないか見直す。
※取組む優先順位:社員間で作業時間や作業品質のバラツキが大きな業務、特定社員への依存度が高い業務

2)繰返し行うが、創造的要素が多い非定型業務:ガイドラインと標準プロセスを定める。また、定期的によりよい方法がないか見直す。

3)将来のために行う未経験の業務:方針を定める。

ルールづくりに慣れるまで難しい面もあるかもしれませんが、先ずは作業方法や判断内容のバラツキが懸念される業務について、2個~3個を箇条書きする程度でもよいので、一旦ルールを決めて運用してみてください。その上で、気づいた事を付け加えていく、定期的にもっとよい方法がないか見直す、といった取組みを繰返していくことで、どんどん実態に即したよいルールが出来てきます。

貴社の生産性を高めるためにも、ぜひ取り組んでみてください。